【完】『ふりさけみれば』
少し遅れたがレストランにたどり着くと、
「予約していた松田です」
と受付を済ませ、奥の個室へと案内された。
観音開きの扉を開くと、
「…どうしたの」
みなみが驚いたのも無理はない。
わざわざ関西から、彩と浪花家贅六師匠が会場まで来ていたのである。
「力もいるよ」
彩はいった。
用を済ませた力が、あとから羽織袴姿であらわれた。
「いやー、こんな洒落たレストランは、緊張してしゃあない」
そういって、その場にいた浅香徹やDJナギサこと結崎なぎさを笑わせた。
そこへ。
「渋滞ひどかったー」
と入ってきたのは秋月しおんである。
それにしても。
なんでこんなに豪華なのか、みなみには分からなかった。
すると。
「あ、兵藤先生来たよ」
梨沙がいった。
そこに。
あらわれた一慶は、黒紋付にシルクハット、手にはステッキ、足元は革靴という姿である。
「みなみも着替えて」
恵里菜に促されるまま着替えた。
しばらくして。
あらわれたみなみの姿は、真っ白なウェディングドレスである。
一斉にどよめきが起きた。
「これより兵藤一慶、橘みなみの挙式を執り行います」
通りのよい贅六師匠の声で、式は始まった。