【完】『ふりさけみれば』
飜花篇

1 桜の寺


…そのようにして。

みなみと一慶は式をあげ、このときには衣装を変えて写真も撮影された。

みなみは。

レースがふんだんに使われた、バッスルスタイルのクラシカルなウェディングドレスである。

いっぽう。

一慶の姿は。

異彩という他ない。

兵藤家の下り藤の紋が打たれた裃をつけ、腰には白絹の柄巻(つかまき)をした大小を差し、頭には裏朱栗金(うらしゅぐりきん)色の反庇(そりびさし)の陣笠をかぶり、顎を白緒で結んである。

ちなみに。

みなみが女子アナという立場上この写真が報道の各社に配信されると、あまりの異色ぶりに大きな話題となり、

──あの真似をしたい。

という一般のカップルがあらわれ、ちょっとしたブームになったほどであった。

この式からほどなく。

お腹の子の性別が分かった、というのを一慶は聞いた。

すると。

料紙を引き寄せた。

何やらさらさらと書いてから、

「ちょっと考えとって、名前はこれがえぇと思うんやが」

とみなみに披見した。



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