【完】『ふりさけみれば』
料紙を開くと、
「みのり」
と書かれてある。
「女の子やろ? うちらの名前を一つずつ取った」
読みは、
「みのり」
と振り仮名があった。
「みのり、かぁ」
「みなみのみ、一慶の慶でみのり。悪くはないと思うんやが」
みなみは黙ったまま見つめていたが、
「いい名前だよね」
「意味も美しく慶ばしい、やから、悪くはないはずやけどな」
どうやら。
一慶なりに考えているようであった。
数日後。
みなみは辞表を出した。
「みなみ、ホントにフリーになっちゃうの?」
恵里菜が問い質すと、
「だって産まれるから」
とだけいった。
これは。
オフィシャルの発言ではなかったが、報道がなされると、たちまちネットで流行語になった。
それはいい。
恵里菜は引き留めにかかった。
「だって、入局の日にあんなに嬉しそうに夢がかなったって…」
「だってったって…かなえちゃったから」
「えっ…」
「…私には、次の夢が出来たの。お腹の子供と、カズと、三人でしあわせに生きて行くって」
みなみの表情は、恵里菜がそれまで見たことがなかったほど、耀きに満ち満ちていた。