【完】『ふりさけみれば』
さらに。
秋に掲載予定であった短編は、印刷の都合で一回ずれて新春号に載った。
載ってほどなく、
「あの『愛する人へ』、ぜひ映像化したいんですが」
というオファーも舞い込み、映画会社の部長が横須賀へ連れてきた主演の女優を見て、みなみは驚いた。
DJナギサこと結崎なぎさである。
「つくづく縁あるなぁ」
一慶はいった。
「先生の本は宝塚の頃から読んでましたんで、どうしても出たくてオーディション受けちゃいました」
ひさびさに結崎なぎさ名義で主演する、との由であった。
映画会社の側も、
「結崎さんと兵藤先生って知り合いだったんですね」
と、意外なつながりに仰天しきりであった。