【完】『ふりさけみれば』
この間の消息は、みなみも一慶からのメールで知っている。
翌日の朝早く。
一慶は京都を発った。
「おみやげは、先に送ったから受け取っといて」
帰りは、何度か使っていた国道を通った。
勝手知ったる鈴鹿峠を抜け、桑名から名古屋を経て、夜は静岡まで走った。
「かなり遅くまで走ったけど、早くみなみに逢いたいから頑張った」
一慶は、みなみのためならというと、少し無理をする嫌いがある。
「安全運転で帰ってきてね」
みなみは最後に、いつものようにハートのマークをつけた。
「給油してからになるから大丈夫」
これが、このときの最後のメールである。