【完】『ふりさけみれば』

翌朝。

午前中、一慶からの指定通りにおみやげを詰めた箱が届いた。

中には一慶からの手紙が添えられてあって、

「…フリーになったら色々大変やろけど、みなみなら大丈夫。なんたって人気者なんやから」

と書かれてあった。

人気者、というのは。

この前の年の暮れ、人気アナウンサーのランキングの四位に、みなみの名前が入ったことを指す。

「みなみの夢は、うちの夢でもあるからねぇ」

このとき。

一慶はみずからが文学賞にノミネートされたときより喜んで、

「赤飯炊いて提灯行列や」

という口癖であちこち吹聴して回り、逆にみなみが少し恥ずかしかったぐらいであった。



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