【完】『ふりさけみれば』
ところが。
予定の昼を過ぎても。
一慶からメールどころか、電話もない。
静岡から横須賀なら、もう着いておかしくないはずである。
「渋滞してるのかな」
電話が鳴った。
「みなみ、みなみ!」
声は恵里菜である。
かなり焦っているような、何やら語気が強い。
「あ。恵里菜おはよー」
「おはよーじゃないって、テレビ見て!」
促されるままみなみは部屋のテレビを点けた。
正午前のニュースである。
「…速報です。今朝、神奈川県箱根町の国道一号線でオートバイが転倒し、運転していた男性が路肩に投げ出され、県内の病院に搬送されました」
画面には。
大破した真っ赤なバイクが映し出された。
ナンバーを見た。
「…カズのバイクじゃん!」
瞬間。
みなみは思考が止まった。