【完】『ふりさけみれば』
実際のところ。
「出産で髪を洗えなかったりしたから、思い切って短くした」
とみなみはいったのだが、
「あれは夫が亡くなると髪を落として尼になる、落飾っていう習慣の一つで」
と、訳知り顔の評論家なんぞは決めてかかったりした。
すると。
「日本古来の風習を、ある女性アナウンサーがよみがえらせた」
という海外での報道が知れ渡るや、
「兵藤一慶ひとすじだった橘みなみの一途な性格」
というイメージが定着し、それまでの少しチャラチャラした印象から、次第に変わっていったのであった。
いっぽう。
当のみなみは、
「今さら伸ばせなくなっちゃったなぁ」
などと笑っていたが、みのりの育児に追われているうちにショートヘアーが楽になったらしく、
「しばらくこのままにしとこうかな」
といい、ショートヘアーにしたのであった。