【完】『ふりさけみれば』
そういうとき。
みなみにとって救いになったのは、アメリカに渡ってダンスの勉強をしていた愛と、逸見に近い田浦に家があった結崎なぎさの存在であった。
愛とは一慶の葬儀で連絡を取り合うようになり、
「カズ兄ちゃんが選んだ人だから大丈夫」
と、アメリカでの生活の合間に、日本が恋しくなるとみなみを姉のように頼ってくる。
結崎なぎさは結崎なぎさで、
「宝塚にいたとき先生の作品に出会ったから、今の芸歴がある」
といって、みなみの今後を気にかけている。
「兵藤一慶の娘が不幸な暮らしなんかしてたら、向こうで先生が嫌な顔するかなって」
そういって毎週、用がなくても顔を出す。
そこへ。
ときおり恵里菜や梨沙も来る。
力仕事など男手の要るときだけは難渋したが、あとは周りに心強い味方もいて、みなみは困らなかった。