【完】『ふりさけみれば』

斯(か)くして。

這えば立て、立てば歩めでみのりがよちよちと歩けるようになった頃、みなみは一慶の一周忌を済ませた。

この頃になると。

ナレーションや吹き替えぐらいでセーブしていた仕事も、徐々に戻り始めてきている。

スタジオでみなみが久々に恵里菜に会ったときも、

「みのりちゃん、大きくなってきたんじゃない?」

と、みのりの話題についなってしまう。

それを聞くと、

「私も子供ほしいなぁ」

恵里菜は真剣に考えてしまう。

「でも結婚ったって、相手を見つけなきゃ、話にならないんだよねぇ」

「それは縁だからねー」

「…あ」

恵里菜は思い出したように、

「そういえばさ、前に兵藤さんの結婚式に来てた…えーと、あのリキだかって呼ばれてた人」

「あ、関藤さん?」

恵里菜がいいたかったのは力のことらしい。



< 279 / 323 >

この作品をシェア

pagetop