【完】『ふりさけみれば』
斯(か)くして。
這えば立て、立てば歩めでみのりがよちよちと歩けるようになった頃、みなみは一慶の一周忌を済ませた。
この頃になると。
ナレーションや吹き替えぐらいでセーブしていた仕事も、徐々に戻り始めてきている。
スタジオでみなみが久々に恵里菜に会ったときも、
「みのりちゃん、大きくなってきたんじゃない?」
と、みのりの話題についなってしまう。
それを聞くと、
「私も子供ほしいなぁ」
恵里菜は真剣に考えてしまう。
「でも結婚ったって、相手を見つけなきゃ、話にならないんだよねぇ」
「それは縁だからねー」
「…あ」
恵里菜は思い出したように、
「そういえばさ、前に兵藤さんの結婚式に来てた…えーと、あのリキだかって呼ばれてた人」
「あ、関藤さん?」
恵里菜がいいたかったのは力のことらしい。