【完】『ふりさけみれば』
そこへ。
目覚めたらしいみのりが、まっすぐ恵里菜に向かって駆けていった。
「みのり、お洋服汚しちゃだめだよ」
「みなみ、いいって。私は全然気にしないから」
恵里菜はみのりを抱いて、
「みのりちゃん、お姉ちゃんと遊ぼうか」
そういうと恵里菜は履いていたヒールを脱いで、芝生の上をみのりと遊び始めた。
すると。
力の前でみのりが転んだ。
「…あっ!」
慌ててみなみが近寄ろうとした。
ところが。
不思議なことに。
みのりはこういう場合でも泣かない。
力は様子を見ていたが、
「みのりちゃん、滅多に泣かへんのやね」
興味を示した。
「泣かへんとこはカズやんそっくりやな。あいつ、親の葬式でも泣かんかったしな」
「そうなんだ?」
恵里菜が訊いてきた。
「まぁカズやんの話はおれよりみなみちゃんの方が、よう知っとるけど」
「まあねー」
みなみはわざと胸を反らして笑った。