【完】『ふりさけみれば』
そこで。
恵里菜は力に手紙を書いてみた。
「さすがに兵藤さんみたいな、あんなキュンキュンする返信なんかは来ないと思うけど」
力にアプローチをかけてみたのである。
翌週。
力から返事が来た。
一慶の手紙を知っていた恵里菜にすれば、少し物足りなさは感じたようだが、
「恵里菜ちゃんって、字が可愛いんやね」
力にそういってもらえて、恵里菜は内心では嬉しさが込み上げてきた。
みなみは、
「ね? 気になる人からの手紙って、下手なブランド品やジュエリーより確実に心を掴まれるでしょ?」
と妙に説得力のあることをいった。
「今はメールやラインがあるから、逆に直筆は価値があるのかも知れないね」
恵里菜はいった。
そういう切っ掛けで。
恵里菜と力は少しずつ、互いの間を詰めていったのであった。
のちに。
「私たち、付き合うことになったさ」
そういうタイトルで、写真の貼付されたメールが送られてきたのだが、
「仲良さそうじゃん」
みなみが見た写真には、親しげに腕を組んで並ぶ恵里菜と力の姿があった。