【完】『ふりさけみれば』

恵里菜と力が交際をはじめてほどなく、みなみはみずからのバイクを売却した。

「せっかくのレア車だけど、うちにはドラッグスターがあるから」

と言った。

が。

一慶の真っ赤なドラッグスターは、例の箱根の事故の際にあちこち壊れて戻ってきて、ほとんどそのままになっている。

「そんな壊れたバイクなんてどうするの? スクラップにしちゃえばいいじゃん」

などと梨沙なんぞは言ったが、

「そう言えば、レストアってのがあるってカズから聞いたことがあって」

みなみは思い出していたことがあった。

とは言うものの。

もともとみなみは機械には全くの門外漢で、何しろ目覚まし時計の電池の向きすら分からなくて一慶に頼っていたぐらいである。

そこで。

みなみが電話をかけたのは、どういう訳か恵里菜であった。



< 288 / 323 >

この作品をシェア

pagetop