【完】『ふりさけみれば』
5 前へ進め!
半月ばかり過ぎて。
「例のドラッグスター、直りましたよ」
との話で、早速みなみは修理費を聞いた。
「まぁあちこち擦れたり割れたりはありましたけど、メインのエンジンやギアは大丈夫でしたから、4万で済みました」
とのことで、存外な安値にみなみは少し拍子が抜けてしまったほどである。
一人で行くのに気が引けたみなみは、梨沙を誘った。
「タンデムはしないからね」
と梨沙も、条件つきながらついていって工場に着くと、
「あれだけの事故だったのに、エンジンは無傷に近いぐらいでしたよ」
という話で、綺麗に磨かれた真っ赤なドラッグスターが、フロアの隅に鎮座している。
一慶のドラッグスターは、背の高いみなみに合わせた仕様に少しカスタマイズされてあった。
シートの蝶番には基礎工事の部材が使われてかさ上げされ、シートもアンコと呼ばれる中のクッション材を少し足してある。
「女性がドラッグスターなんてのはカッコいいですしね」
業者はレストアが楽しくて仕方ないような顔をした。