【完】『ふりさけみれば』
正直みなみは気が進まなかった。
「どうなのかなぁ」
愛がどう思うか、そこだけが気になって仕方なかったらしい。
が。
次の日みのりを連れて出掛けたランチの店でばったり出くわした梨沙は、
「案ずるより産むが易しってとこかなぁ」
とだけ言った。
「要はこんなとき、兵藤先生ならどうするかってことだよね」
みなみはハッとした顔になって、
「確かにカズは、悩んでて分からんならやってみぃってよく言ってた」
知って驚くのと知らないで驚くのとでは違う、というのが一慶の見立てであったが、みなみは深く考えたことはない。
「…取材、引き受けてみよっかな」
みなみが何か吹っ切れたように、このときの梨沙の目には映ったらしい。