【完】『ふりさけみれば』
応接室に通されたみなみは、園長から仔細を取材することにした。
「まぁ愛ちゃんも今じゃあダンサーとして売れっ子やからねぇ」
うちの園の子供たちの星みたいなもんです、と園長は言う。
「もともとうちの園にあの子が来たんは、ちょっとした理由がありまして」
と園長は茶を飲んだ。
「あの子は何も知りしませんけど、うちの園の門の前に置き去りにされとったんです」
これはみなみも初めて聞く話である。
「で、くるまってたタオルに愛って書いてあって、ほんで名前は愛にしたんですわ」
ちなみに。
「最初っから名字は分かりません」
森高、という名字は施設で当時、乳児を担当していた職員の名字から採ったとの由であった。