【完】『ふりさけみれば』
東京へ戻ったみなみは、制作会議に例の取材した園長のコメントなどを提出した。
すると。
「うーん」
と、それまで乗り気で前のめり気味であったディレクターが、背もたれに身を預けて考え込みはじめたのである。
が。
やがて口を開いた。
「もうちょいパンチのある内容を期待してたんだけどなぁ」
これではほのぼのしていて使いづらい、というのである。
「しかし事実関係は、提出した資料の通りです」
面白くするなら捏造ぐらいしか手段はないですが、とみなみには珍しく捏造という、衝撃の強い単語を使ってディレクターに返した。
ディレクターは考え込んでいたが、
「さすがに捏造はバレたら番組が飛ぶからなぁ」
この段階でボツが決まった、といっていいであろう。