【完】『ふりさけみれば』

東京へ戻ったみなみは、制作会議に例の取材した園長のコメントなどを提出した。

すると。

「うーん」

と、それまで乗り気で前のめり気味であったディレクターが、背もたれに身を預けて考え込みはじめたのである。

が。

やがて口を開いた。

「もうちょいパンチのある内容を期待してたんだけどなぁ」

これではほのぼのしていて使いづらい、というのである。

「しかし事実関係は、提出した資料の通りです」

面白くするなら捏造ぐらいしか手段はないですが、とみなみには珍しく捏造という、衝撃の強い単語を使ってディレクターに返した。

ディレクターは考え込んでいたが、

「さすがに捏造はバレたら番組が飛ぶからなぁ」

この段階でボツが決まった、といっていいであろう。



< 318 / 323 >

この作品をシェア

pagetop