【完】『ふりさけみれば』
その帰路。
久しぶりに恵里菜や梨沙と女子会になったみなみは、ディレクターとの一部始終を話した。
「まぁそのぐらいっていうか、確かに内容にパンチはないよね」
制作サイドにあたる梨沙は作り手としての率直な見識を述べた。
が。
違った意見であったのは恵里菜で、
「私は逆に、番組になんかならなくて良かったと思う」
だってみなみのプライベートに近い話でしょ、と恵里菜は言う。
「むしろお蔵入りになって、私は良かったと思うけどなぁ」
恵里菜の感覚は作り手より受け手に近い、いわば視聴者のような面があった。
こういうところが。
見る側と作る側との齟齬で、それが視聴率というシビアな数字に跳ね返るのかも分からない。
なので。
作り手としては辛口な評を下した梨沙だが、
「ま、でも使えなくなったら大丈夫だって」
っ内心では、みなみのことを使われて欲しくなかったらしかった。