【完】『ふりさけみれば』

しばらく過ぎた。

夜、みなみがみのりを託児所から連れて帰宅し、一緒に夕食をとった。

「今日はみのりの好きなミートボールだよ」

二人で食べていると。

カタカタ、と部屋が揺れ出した。

「あ、地震」

みなみはみのりとテーブルの下に隠れた。

横揺れがややしばらくあって、揺れはおさまった。

みなみが電源や火元を確認して、怯えているみのりを抱いてあやしていると、ロフトの方からドサッという音がした。

「…カズの部屋かな?」

そういえば。

例のバイク事故のあと、みなみは一慶がいたロフトに足を踏み入れていない。

「見たら思い出してしまうから」

というので、几帳面な一慶が生前に片付けたままにしてあったのである。

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