【完】『ふりさけみれば』
5 爆弾を抱えた男
無事に翌日、一慶は上賀茂の自宅に戻った。
マネージャーの説明によると、
「先生はあの通り、何でもいってしまいますから」
誤解されたんでしょう、といった。
しかし、とマネージャーはいう。
「次に大きな失言をした場合、正直申し上げて芸能生命は保証出来かねます」
これには、みなみも驚いたらしい。
いや。
驚いた、というどころではなかったらしく、軽いパニック症状になったのか顔が青ざめていた。
が。
当の一慶はすぐさま原稿を書き始め、
「あの程度の発言で波風が立つような世間では先が思いやられる」
と、いっさい謝らない姿勢を貫いたのである。
「自分が仮に誤認によって失言となったなら謝る必要はある。したが」
供託金は現に三百万は最低かかるやないか、と毒づいて、
「ホンマの話を言うて謝らなアカンっちゅう屁理窟はない」
と、謝罪要求を突っぱねたのであった。