【完】『ふりさけみれば』
帰路、河原町三条で彩と関藤を見送って、みなみと一慶は何気なく鴨川を歩いてみることにした。
昼はあんなに陽射しが厳しかったのが、夜になると川風が涼しい。
ところで、と一慶は訊いた。
「東京での仕事はどや?」
「最近はバラエティーが増えたよ」
「順調そうやな」
「うーん、目指してる報道とかとは程遠いけどね」
みなみは不本意そうな思いの混ざった笑顔を浮かべた。
「こっちみたいにレギュラーなくなるよりええやろ」
自嘲気味に一慶は笑った。
「でもどうして…」
「嘘は罪になるけど、事実を言うたかて罪にはならんやろ? 自分はホンマのことしか言われへん」
きっぱり、しかしどこかで覚悟を決めたあとのような、やわらかい一慶の口ぶりと裏腹に、みなみはある種の凄味を感じた。