【完】『ふりさけみれば』
梨沙はみなみの口から兵藤一慶の名前が出てきたことに驚いたが、
「もしかしてみなみ、先生と会ったの?」
「うん」
梨沙は突っ込んでみた。
「ひょっとして…好きだとか?」
「ううん」
梨沙はホッとした。
「自分で失言してレギュラー棒に振っちゃうような人だからね、やめといたほうがいいって」
「梨沙って研修のときから心配性だよね」
みなみはクスクス笑いだした。
「笑い事じゃないし」
「分かってるって。だいいちタイプじゃないから」
確かに。
みなみの好きなタイプは、いわゆるイケメンのアスリートのような男性である。
ひきかえ。
一慶はみなみより背も小さく、体型もがっしりしてはいるが、アスリートという感じではない。
顔も秀麗ではない。
「だから大丈夫、眼中にないし」
みなみはビールを飲んだ。