【完】『ふりさけみれば』

梨沙はみなみの口から兵藤一慶の名前が出てきたことに驚いたが、

「もしかしてみなみ、先生と会ったの?」

「うん」

梨沙は突っ込んでみた。

「ひょっとして…好きだとか?」

「ううん」

梨沙はホッとした。

「自分で失言してレギュラー棒に振っちゃうような人だからね、やめといたほうがいいって」

「梨沙って研修のときから心配性だよね」

みなみはクスクス笑いだした。

「笑い事じゃないし」

「分かってるって。だいいちタイプじゃないから」

確かに。

みなみの好きなタイプは、いわゆるイケメンのアスリートのような男性である。

ひきかえ。

一慶はみなみより背も小さく、体型もがっしりしてはいるが、アスリートという感じではない。

顔も秀麗ではない。

「だから大丈夫、眼中にないし」

みなみはビールを飲んだ。



< 53 / 323 >

この作品をシェア

pagetop