【完】『ふりさけみれば』

何日かして。

みなみが出社すると、なんだかアナウンス室の全体がざわついた様子になっている。

「おはようございます」

みなみは挨拶した。

すると。

「橘くん、ちょっと」

呼び止めたのは昇進して上司になった清家である。

「今日の一面見たか?」

「まだです」

それなら、と清家は新聞を拡げた。

すると。

「松田恵里菜結婚」

という大見出しが踊り、しかも相手は例の浅香選手である、という。

「…恵里菜が?」

「そうか…同期の橘くんにすら打ち明けてなかったんだ」

とにかく身辺は気をつけるように、と清家は椅子を立った。

みなみは事態がよく把握できていなかったらしい。



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