【完】『ふりさけみれば』

8 古都の休日


この一件で。

みなみは人前に出るのもしんどくなるほど、すっかり鬱(ふさ)ぎ込んでしまい、

「ちょっと取材してきます」

といい、ニュースセンターの仕事がない日は、東京から逃げるように京都の彩たちのもとを訪ねたりする日が増えた。

が。

何度めかのときに、変化があった。

折悪しくそのときは、彩が関藤と京都を離れていたのである。

のちに。

このときの事象がきっかけで彩と関藤に新たな展開が起きるのだが、ここではその話は本題ではない。

話柄をみなみに戻す。

それで一人でいるのも味気ない、と感じたらしく、

──先生、スケジュール空いてますか?

と一慶に訊いた。

一慶はいつもながらの穏やかな調子で、

「夕方からなら大丈夫です」

と丁寧に返事をしてくる。

この変わらなさが、みなみにちょっとした進展を及ぼしたようで、

──たまには二人で会うのも悪くないかな。

と少しだけ思えるようになったらしい。



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