【完】『ふりさけみれば』
その日。
いつもの待ち合わせの三条大橋は雨である。
どしゃ降りではない。
が、手傘はないと濡れてしまう。
みなみはその高い背丈と、少しだけふっくらした体躯を隠すように、日頃と変わらないざっくりとした服をまとっていた。
「待った?」
みなみは声の方を向いた。
すると。
細身のデニムにカーキ色のブルゾン、背にはサイケデリックな柄のピンクのリュックという、それまでなかったラフな古着姿の一慶がいたのである。
「女の子とデートやからね、たまにはこういう格好でもせな」
一慶はいったが、みなみは実は一慶が古着好きであることに気づいていた。
「先生って古着よく着てますよね」
「まぁな」
古着は一点モノでかぶらんやろ、と一慶はいった。