【完】『ふりさけみれば』

いっぽう。

ニューススタジオで気象情報を読むだけで、ほとんどみなみは一慶をはじめとするメインスタジオとの接点はない。

たまに。

デパートの地下でロケーションをしてきた弁当や惣菜の特集でスタジオで紹介したりというのはあるが、その程度の、

「どうでもいい仕事」

しか、みなみには回ってこない。

容貌も、目立つものではない。

まるでハーフのように、顔の造形はハッキリしている。

が。

図抜けた美女ではない。

まだ新人のアナウンサーであった頃、インドとロシアのハーフだというファッションモデルに、

「あなたもハーフ?」

と訊かれたことがあるが、みなみは純然たる大和民族である。

グルメのリポートも。

そんなに飛び抜けて上手というわけでもない。

しかも。

女子アナというのはとかく派閥があって、みなみは母校の女子大学から初めて入局したからか、無派閥というより頼るべき先輩がいない。

心細いこと、この上ないであろう。



< 6 / 323 >

この作品をシェア

pagetop