【完】『ふりさけみれば』
雨を避けるようにみなみと一慶は錦市場へ出た。
「まぁ京都っちゅうたら、テレビ屋でも何でもここやからね」
一慶なりの言い回しで、どこか諷刺めいた空気のそれをいった。
「せやかて」
と一慶は続ける。
「別にこっちも根っからの京育ちでもないしやな」
剥いた話が異邦人や、とおどけ気味に肩をすくめた。
「でも」
みなみはいう。
「兵藤先生といえば京都っていう居場所があるじゃないですか」
私なんか、とみなみは少し言葉を詰まらせてから、
「こないだ函館に帰ったんですけど、親が素っ気なくて」
「そら愛情ちゃうか?」
「愛情…?」
「せや、愛情や」
一慶は錦天神の鳥居に手を合わせた。