【完】『ふりさけみれば』

二人は錦天神に詣でた。

いつしか。

雨も上がっており、ビルの隙間の、うっすら刷毛を掃いたような空には、虹がかかっている。

「突き放すのは、期待の裏返しなんとちゃうかなぁ」

一慶はいった。

「まぁうちみたいに親から進路を押し付けられて、腹立ったから敢えて追い出されるように自分で仕向けたっちゅうのもおるけどな」

おみくじを引いてみると、一慶のそれは末吉である。

「橘くんのは?」

覗き込んでみると、大吉とあった。

「なるほど、橘くんは京都に来たのが大吉やったっちゅうこっちゃね」

みなみは新鮮な、東京ではまず感じたことななかった、デートとはこんなに楽しかったのかというぐらいの、温かく明るく柔らかい気持ちをおぼえた。



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