【完】『ふりさけみれば』

何日か、過ぎた。

みなみが出勤すると、デスクに若草色の見慣れない封筒がある。

宛名には万年筆で、

「橘みなみ様」

とある。

実に書き慣れた、美しい文字というほどではないものの、万年筆を普段から使い馴らしてある字である。

差出人は、すぐ分かった。

「兵藤一慶事務所」

と下に書いてあったからである。

どうやら。

事務所の封筒で何か送って来たらしいことだけは、みなみもすぐ感づいた。

すぐさま。

鞄にしまって、パソコンを開いて溜まっていたメールのチェックを始めた。



< 63 / 323 >

この作品をシェア

pagetop