【完】『ふりさけみれば』
何日か、過ぎた。
みなみが出勤すると、デスクに若草色の見慣れない封筒がある。
宛名には万年筆で、
「橘みなみ様」
とある。
実に書き慣れた、美しい文字というほどではないものの、万年筆を普段から使い馴らしてある字である。
差出人は、すぐ分かった。
「兵藤一慶事務所」
と下に書いてあったからである。
どうやら。
事務所の封筒で何か送って来たらしいことだけは、みなみもすぐ感づいた。
すぐさま。
鞄にしまって、パソコンを開いて溜まっていたメールのチェックを始めた。