【完】『ふりさけみれば』
とにかくも。
そういったなりゆきで、休暇になるとみなみが新幹線で上洛し、その間隙に互いに手紙をやりとりする…という形態になった。
無論。
ツールとしてメールやインターネットが全盛な現代に於いて、である。
だが何しろ。
書いて投函し、待てば一慶から直筆の手紙が来る。
平成生まれのみなみにとって、こうした感覚は新鮮な感動があったようで、
「まるでゲームみたい」
といったようなことを、のちに振り返って、後輩に語っている。
ところで。
上洛するとたいがい待ち合わせの場所は、随心院の近くにあった関藤家の盆栽園で、
「ここならえげつない週刊誌も、敷居が高くて入られへんやろ」
という、力の発案によるものであった。