【完】『ふりさけみれば』
折しも。
上賀茂の一慶の自宅がマンションの建設で立ち退くことが決まり、
「こんなえぇ歳して宿無しやがな」
などとぼやいた。
だが。
「よっしゃ、うちに任しとき!」
力はいった。
しばらくして。
「物件、見つかったで」
と、力から電話が来たのである。
のちのち酒の席で力が明らかにした逸話だが、
「若の頼みならしゃあないな」
と、力の盆栽園の常連の不動産屋の社長の紹介で、西陣の外れの椿寺の裏手に引っ越せたらしい。