【完】『ふりさけみれば』
転居が落ち着いて、ひさびさにみんなで飲もう、と集まった席で、
「あれ、よう芸能人とか女子アナとかデートがバレてえらい目に遭うやん?」
「よくワイドショーとかであるやつでしょ?」
彩が相槌を打つ。
「あれ、みんな東京で密会しようとするから見つかんねん」
と一慶はしたたかに放言した。
「そら目から鱗や」
力は手を叩いて笑い転げた。
確かに。
いわれてみればその通りで、地方までリポーターが執拗に追い掛け回す例はほとんどない。
「カズ頭えぇなぁ」
力は感心しきりという顔をした。
みなみは。
一慶のこのときどきやらかしがちな放言癖が嫌いではなく、
「いいたくてもいえないことを、平気でいってしまうからハラハラする」
と口ではいったが、内心は、
──一慶さんって、裏表がない人なんだ。
と、毒舌家である一慶の、本心の裏側を垣間見たような気がした。