【完】『ふりさけみれば』
2 みなみの気持ち
数日ばかり過ぎた。
みなみがスタジオに入るべくエレベーターに乗ると、
「あ、みなみ」
顔を向けた。
声の主は松田恵里菜である。
「珍しいね」
無理もないであろう。
みなみが担当する時間帯はだいたいが朝方か午前中で、真夜中に放送されている恵里菜のスポーツニュースとは時刻が正反対に近い。
それが。
「これから特番の打ち合わせなんだけど、やっぱりスポーツのほうがいいな」
と恵里菜はいった。
「えっ?」
「だってみなみ、芸人さんからしょっちゅうナンパされるんでしょ?」
「うん」
そこは否定しない。
「私、ナンパは苦手だな」
「そっかぁ」
そもそも。
同期とはいえ、親しく接する間柄ではない。