【完】『ふりさけみれば』

やっぱり。

「ね、恵里菜」

みなみは思い切って訊ねてみた。

「フリーになるの?」

しばし恵里菜は面喰らった顔をしたが、

「そんなフリーなんてなるわけないじゃない」

「だって…」

「みんな噂って勝手なことばっかり言ってるからさ、わたしは正直困ってることもあって」

というのも。

「トオルのことにしても、子供の頃から家族ぐるみの付き合いで、別に恋だの愛だのって付き合ってなんかないし」

「…えっ?」

「うちの父とトオルの父は、同じ大学の先輩後輩なわけ」

だから小学校で野球始める前の頃から、普通に鬼ごっこしたり自転車乗ったりして遊んでたし、ということを恵里菜はいった。

「…知らなかったなぁ」

「まぁみんなに触れて回るような話柄でもないしね」

それより、と恵里菜はいう。

「兵藤先生との一件、どうなの?」

恵里菜は直球で訊いてきた。



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