【完】『ふりさけみれば』
そこで。
みなみは初めて、恵里菜と一緒に休みに上洛したのである。
メールでは聞いていたが、
「みなみちゃんから連絡はもらっとったけど、まさかほんまに来るとは思わへんかったで」
一慶は少し驚いた様子であったらしかったが、
「ま、世の中何でも人数のおるほうがおもろいから、えぇんとちゃうか」
したが、と一慶は続ける。
「なるほど世間でマツエリって騒ぐわけやな」
さらにいう。
「ただ、美人ってことは、寄り付く男がなんぼもあるから売り手市場で、裏返せば選り抜くだけ選り抜けるってことやな」
しかし。
ここからが一慶の面目躍如たる言葉で、
「これが選り抜いた割にはしょうもないスカ引いて、ペケがつきよるのが話のサゲになったりしよるから、世界はけったいでしゃあない」
そういって、一同を一慶は笑わせた。
が。
その眼の底にはどことなく冷えた、まるで天守閣から満天下を見渡しているような、社会に対し突き放したような様子が、みなみには映った。