【完】『ふりさけみれば』
思わずみなみが、
「実はスポーツの仕事が、同期の松田ちゃんに決まりまして」
「松田ちゃんって、誰?」
首を傾げた。
そういえば一慶はほとんどテレビは観ない。
もともと。
京都でのんきに小説を書いたり、旧知の清水焼の窯元で陶芸を学んだり…という実に世捨て人じみたところがある。
いわば古い関西弁でいう、
「気儘人(きままにん)」
という部類である。
なので、松田ちゃんといわれても、一慶には皆目分からない。
こういう。
浮き世離れした面も、人気の要因であったらしい。