【完】『ふりさけみれば』
一慶の醒眼は、酒が入るとさらに鋭くなった。
「テレビって最初にどっかボーンと何か当てるとあとからみんな追随するやろ」
あれ新鮮味ないな、と一慶はいう。
「本来クリエイティブなはずの作り手が後追いするのは、いわゆる手抜きやけど取材そんなせんでも済むし楽やもんな」
これにはみなみも恵里菜も、同席していた彩ですらも苦笑いで、
「まぁアナウンサーは原稿読むだけやからお門違いかも知らんけど、盆栽屋が素材から樹を作ったり、物書きがいちいち取材しなあかんのに比べたら、なんぼ楽か分からん」
これには力でさえ笑うしかない。
そのように。
一慶という男は、
「所詮この世は食うて寝て交尾して終わり」
という、何に対しても冷ややかな目線を持っているようであった。