【完】『ふりさけみれば』
この時期。
みなみは一慶のことに少し興味を持ち始めたようで、
「何か知ってることはないですか?」
と、三人で飲んでいたときに彩や力に問うたことがあった。
上ヶ原の大学の頃からの付き合いである力も、
「うーん」
と小さく首をかしげ、
「小さな造船会社の末っ子らしいってのまでは知っとるけど、あとは分からん」
という話であった。
が。
のちのち力があちこち訊き回った話を繋ぎ合わせると、
──けったいな男やで。
という印象が浮かび上がってきたのである。