【完】『ふりさけみれば』
話を続ける。
みなみは少し感情的になって、
「所詮この世界は顔でしか評価されないんです!」
と若干ヒステリックな声をあげた。
「…」
一慶は紬の羽織袴に懐手でしばし黙考していたが、
「まぁ橘くんは、成長する見込みがあるっちゅうこっちゃね」
と言った。
「…えっ?」
「人間、何がどこでどう化けるか分からんから、アンテナだけは張っとき」
瓢箪から駒っちゅう喩えもあってうまいこと行くかも知らんで、と一慶は言い残して、次の仕事場へと移動したのだが、
「…成長する見込み、か」
その言葉だけは、みなみの胸に響いたらしかった。