【完】『ふりさけみれば』
すると。
「お前、ほんまに大丈夫か?」
と担任や学務主任が実家に手紙を寄越す事態となったことがある。
当然ながら。
ひどい場合には掴み合いの喧嘩になり、進学に響くと恫喝されたり、学務課に間に割ってもらったりするほどの問題を引き起こすことがあったりで、
「今やどれだけ円満になったことか」
と、力は苦笑ぎみにいい、
「たまにテレビ見たけど、あきらかに調子がそんなんやった」
と語ったことがあった。
どうやら。
「三つ子の魂百まで」
というようなものであったらしかった。
果然。
一慶は教科主任から内申書に気性を悪し様に書かれたことがあって、
「まぁ大人っちゅうのは、顔でいうこと聞くフリだけしとけばえぇ」
と平然とうそぶくような、どこか醒めた性根を持つに至った…というのが力の知るエピソードであった。
みなみはそれを聞いて、
(ずいぶん激しい人なのかも)
と感じたらしいが、それとは別に、
──どうしてそんな、肚の据わったところがあるのかな。
と、一慶という人物にますます興味を持ったようである。