【完】『ふりさけみれば』
夜。
すでに雨は止んでいる。
いつもの木屋町の居酒屋に行くと、彩が先に奥の座敷に一人ぽつねんと座って待っていた。
「なんかごめんね急に」
「いやぁ、それはえぇねんけども」
どないしたんや、と座るが早いかいうが早いかという様子で力は掘炬燵に脚を伸ばした。
「取り敢えず、生の中ジョッキ」
突き出しが来る。
「あと唐揚げと…彩は何がえぇ?」
「梅酒ハイと、あとそれからポテサラもらおうかな」
ほなそれで、とオーダーは早い。
「実はね」
「?」
「私さ…事業始めようと思うんだ」
「事業?」
ジョッキと梅酒ハイが来た。