奏で桜
彼が何か言おうとした次の瞬間…




私は持っていた日傘を閉じて、
地面に置き、彼の顔面に向かって
掌打を繰り出す。

掌打の炸裂音とともに、
彼は無残に仰け反り、
後ろにあった石壁に頭をぶつけ
地面に倒れた。



私が彼を倒すと同時に、
場の空気は張り詰めたように
冷たく、一変するものとなった。







「おい…なに、してん、だ…」


「てめぇッッッッ!!」




彼は潰された鼻から出る血を右手で
抑え、激昂した。

その様子は熟しきったトマトが
何かを必死に訴えているようである。



私はそんな彼をみてくすっと笑った。
< 106 / 169 >

この作品をシェア

pagetop