奏で桜

ー私達はそれから彼女を
血眼になって探した。

そしてようやく、私が
彼女の目撃情報のようなものを
聞き出して、彼と一緒に
そこに向かい、たどり着いた頃、


…私はその光景に
〝違和感〟のようなものを感じた。

その違和感は水をコップの中に入れる
ように、最初は微量だったが、
徐々に増え、最後には違和感で
満たされ、〝恐怖〟がこぼれる
ほどになっていく。






…トンネルの中の照明は
その見かけ通り、頼りない光を
パチパチと灯していて、
トンネル内をゆらゆらと
揺らしていた。

そして、そのトンネルは
カビの匂いと鉄の匂い
が入り混じり、異様な香りを
醸し出していた。


よく見てみると、
壁に書いてあるおびただしいほどの
落書きの中に最近塗られた赤い塗料の
ようなものが混じっていて、
それはさながら、人の
血飛沫のように見える。




その中で彼女は…、








〝少女は…返り血の中で
そっと佇んでいた。〟