奏で桜
僕はその提案を呑んだ。
その方がいいだろうと陽彩さんに
頭を下げながら、彼女の衣食住に
欠かせないものを渡したのだ。

…幾日か経ち、僕はこの部屋で
一人ぼっちに過ごしていた。

彼女が決めたことなのだから、
反論するつもりはない。


しかし、彼女が居なくなった
この部屋は少しばかり広くなりすぎた…

そんな気はした。







「〝もう会いたくない〟、か…」


僕はすっかり冷めてしまった、
生姜湯をキッチンのシンクに捨て、
汗でびしょ濡れになった服を着替え、
アルバイトに行く準備をする。



身体の火照りは次第に治らなく
なっていき、さらに頭痛もひどく、
目眩さえした。

それでも、次期にアルバイトも
始まってしまうので、早く準備を
しなければならない。
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