奏で桜
アルバイトを休むという選択肢もあったが、
こないだお休みを貰ったばかり
なのに、体調不良で、
またしても出られなくなり、
店の人達に迷惑をかける…。

そんなことはしたくなかった。


それに動いていると
この悪循環たる思想を
忘れられそうな気がするので
なるべくそうしていたいと思った。





ー僕は玄関の扉を開け、
アルバイト先に向かった。

まるで炭で焼かれたように
熱かった身体は、氷晶を含む
冷えきった風のおかげか、
あるいはそのせいで、見事に
汗は渇き、通常の体温よりも
下がったように感じられた。


先ほどよりも雪風の勢いは増し、
その冷気とともに身体の自由さえも
奪われていく。


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