奏で桜
〝こっちの世界に出ちゃえばその辺に転がる
石ころと一緒なのよ。〟




昔あいつに話した自らの言葉をふと思い出す。
そしてそれを改めて痛感し、
まるで木偶人形のように私は体を
動かせずにいた。



「もしもし?聞こえてますか?
もしもーし?…ー…?」


動悸が早く、大きくなっていくのは
ごく自然なことだった。
医師の呼ぶ声もだんだんと遠のいていく。

今になって、ことの重要性に
気づかされたからだ。




…ミブンショウ?…レンラク?
イシコロ…?…デク…?


頭の中を混迷が襲う。
なにをどうすればいいのかわからない。
完全に処理落ちしていた。



誰かに救って欲しいと思った。
誰かに救われたかった。




そうやって、気づくと私は必然的に
無力な救いを求めていた。
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