奏で桜
…〝彼女〟は一体、誰なんだろう。


いまの彼女に以前のような少女の
面影は一切ない。


既に壊されてしまったのであろうか。
それとも作り変えられてしまったので
あろうか。
少なくともそこにいるのは
僕の知る〝彼女〟
ではないことは確かであった。

まるで首の捻じ切れた人形に
また別の人形の頭を取り付けた
みたいに、別人のような顔をして
彼女は僕に気を遣い、
柔らかく微笑む。



それが僕には堪らなく辛く、悲しく、
そして、無性に苛つかせたのであった。
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