奏で桜
ーあれから更に数日が経過した夜…。


その日もまだ〝いつかの暗闇〟
は続いていた。


このような夜をもう何度
過ごしてきたのだろう。

…唯一、変わるのはあの月の形
くらいであろうか。



「…本当にいいの?」


彼女はしおらしい面持ちを
見せながら尋ねる。

僕は諭すように〝勿論〟と答えた。



「…でも吸っちゃったら、
もう元には戻れないのよ?

…いや、貴方の身体には何も
変化はないのだけれど、

…けど、もし貴方に
裏切られちゃったら、
私の気持ち的にもきっと
辛いだろうし…

あ…、別に貴方を信用してない
わけじゃなくてっ…。」
< 87 / 169 >

この作品をシェア

pagetop