奏で桜
〝一体感〟



彼女の中に〝僕〟が入っていき、
僕の中に〝彼女〟が入ってくる…。

それも血を吸われるごとに
より濃密になっていくのだ。


それが僕にとっては少し嬉しかった。


…となるとこの心地よさは感情的な
観点から来るのかもしれないな。





「うん…、これで終わりね。
痛くなかった?」


彼女はまた唇をそっと離すと、
痛みを和らげるように、
僕の首筋にふぅっと
払うように息をかけ、
神妙な顔つきをして聞いてきた。

もちろん僕は〝大丈夫です〟
と答える。
しかし、彼女はまだ神妙な顔つきを
していた。



「…。」


「…どうかなさいましたか?」


「…〝道具〟…か。」


「…え?」
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