イケメン御曹司に独占されてます
「ねぇねぇ、本当に願いが叶うの?」


「萌愛がそれを信じるなら、きっと叶えてくれるんじゃないかな」


そう言いながら視線を落とした、寂しげな横顔がとても気にかかった。


「ねぇ、ターくんのお願いは、なぁに?」


私の問いかけに曖昧に微笑んだターくんが、読んでいた本をパタリと閉じる。


「そうだな。時間が戻ればいいね。できれば、一年くらい前に」


「どぉして?」


「取り返しのつかないことをしてしまったから。……僕のせいで、大切なものを失ってしまった」


そう言って辛そうにうつむいたターくんを見ていると、何だか私の胸も苦しくなる。いつの間にか溢れてしまった涙に気づいたターくんが、苦笑して近寄ってきた。


「萌愛? ……馬鹿だな。僕は大丈夫だよ」


ターくんはそう言うと、優しく私の頭を撫でてくれた。


よつ葉のクローバを見つけたら、ターくんのために魔法を使おう。ターくんの望むように、時間を戻してもらうのだ。
だけど一年前に時間を戻したら、そうしたら私とターくんも会えないのかな。そんなの、絶対嫌だけど。
でも……。
ターくんの願いが叶って、もうこんなに寂しい顔をしなくなるなら、それでもいいような気がした。


「魔法のクローバー、絶対見つけるね!!」


ターくんは、またよつ葉を探し始めた私を見て安心したのか、読書の続きを始める。
その姿をそっと盗み見た。
優しくて、かっこよくて、頼もしいターくんは私の理想の王子様。
だけど今は、何よりもターくんに笑っていて欲しい。


だからあの日、急に東京に帰ることが決まったターくんに、どうしてもよつ葉のクローバーを渡したくて、決してひとりで行ってはいけないとターくんにと源兄ちゃんに厳しく言われていたあの場所に、私は——。







「……萌愛?」
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